お金は社長の「不安のバロメーター」です。毎月15日に確認すべき、たった3つの数字
今月、月末の支払いは本当に大丈夫ですか?
「なんとなく大丈夫だろう」という根拠のない楽観と、「もしかしたら足りなくなるかも」という漠然とした不安。
この二つの感情の板挟みになり、夜中に一人で資金繰りのことを考えてしまう社長の気持ちは、痛いほどよく分かります。
なぜなら、私自身がかつて、社員15名のアパレルベンチャーでCFOとして、常に資金繰りの綱渡りを強いられてきたからです。
銀行からの融資交渉、支払いの延期依頼、社員の給与確保に奔走する日々の中で、私は痛感しました。
お金は、社長の「不安のバロメーター」です。
そして、その不安を解消し、社長が本来集中すべき「価値創造」の活動を後押しするのは、複雑な財務諸表ではなく、たった3つのシンプルな数字です。
この記事では、元・資金繰り泥沼CFOであり税理士の私が、過去115社の赤字企業を救ってきた経験に基づき、毎月15日に確認すべき「未来を予測する羅針盤」となる3つの数字を、具体的なアクションと共にお伝えします。
もう、夜中に一人で悩む必要はありません。
さあ、数字に「血を通わせましょう」。
なぜ「毎月15日」なのか?不安を解消する資金の潮目
なぜ、月末でも月初でもなく、毎月15日を資金繰りのチェックポイントにすべきなのでしょうか。
それは、多くの企業にとって15日が「資金の潮目」だからです。
資金ショートの「予報」を出す日
多くの会社では、給与の支払いや主要な仕入れ代金の支払いが、月末や翌月上旬に集中します。
15日というタイミングは、これらの大きな支出が発生する約2週間前。
この時点で資金の流れをチェックすれば、月末の資金ショート(黒字倒産)という「嵐」を事前に察知し、対策を打つための十分な時間的猶予が生まれます。
資金繰りは、まさに天気予報と同じです。
「月末に雨が降る(資金が足りなくなる)」と分かっていれば、傘(融資や売掛金の早期回収)を用意できます。
しかし、予報を見なければ、土砂降りの中で立ち尽くすことになってしまいます。
毎月15日に、たった3つの数字を確認する習慣こそが、あなたの会社の未来を守る「資金の天気予報」となるのです。
社長の不安を消す「未来予測型」のたった3つの数字
社長が確認すべき数字は、複雑な会計用語が並ぶ損益計算書や貸借対照表の数字ではありません。
必要なのは、「未来のキャッシュフロー」と「会社の稼ぐ力」に直結し、社長がすぐにアクションできる、以下の3つの数字です。
- 今月の着地見込み残高(月末予測)
- 売上債権の回収サイト(日数)
- 限界利益率(パーセンテージ)
これらは、私が過去のコンサルティングで「不安が消えるシート」として活用してきた「未来予測型キャッシュフローシート」の核となる指標です。
数字1:今月の着地見込み残高(未来予測の羅針盤)
毎月15日に、まず確認すべきは「今月の着地見込み残高」です。
「残高」ではなく「見込み」が重要
この数字は、「今月、すべての入金と出金が終わったとして、月末の銀行口座にいくら残っているか」という予測値です。
過去の残高ではなく、未来の残高を予測することが、資金繰り管理の最も重要なポイントです。
- 定義:月末の銀行口座残高の予測値
- 確認方法:15日時点の残高に、16日以降の入金予定額を足し、16日以降の支払い予定額(給与、仕入れ、家賃など)を引く。
この数字が、あなたの会社の未来予測の羅針盤となります。
もし、この見込み残高が、最低限必要な運転資金(例:翌月の固定費の1.5ヶ月分)を下回るようであれば、すぐに手を打つ必要があります。
「航海」に例えるなら、これは「目的地に到着した時に、船に燃料が残っているか」をチェックする行為です。
燃料が足りないと分かれば、スピードを落とすか、途中で給油(融資や早期回収)の手配をしなければなりません。
数字2:売上債権の回収サイト(資金の回転速度)
次に確認すべきは、あなたの会社の「資金の回転速度」を示す「売上債権の回収サイト」です。
「売上」が「現金」になるまでのスピード
売上債権とは、売掛金や受取手形など、まだ現金化されていない売上のことです。
回収サイトとは、「売上が発生してから、実際に現金として銀行口座に入金されるまでの平均日数」を指します。
- 定義:売上発生から現金化までの平均日数
- 計算式:売掛金残高 ÷ 1日あたりの平均売上高
この日数が長ければ長いほど、資金繰りは苦しくなります。
売上は上がっているのに手元の現金がない、いわゆる「黒字倒産」の多くは、この回収サイトが長すぎることに起因します。
これは畑仕事の収穫サイクルに似ています。
種をまいてから収穫(現金化)までの期間が短ければ、次の種まき(次の投資)にすぐに取り掛かれます。
回収サイトを1日でも短縮することは、資金繰り改善の王道です。
【15日に確認すべきアクション】
- 回収サイトが前月より長くなっていないか?
- 特に回収が遅れている取引先はないか?
- 請求書の発行日を、契約上可能な範囲で前倒しできないか?
数字3:限界利益率(利益の安全マージン)
最後に確認すべきは、あなたの会社の「真の稼ぎ力」を示す「限界利益率」です。
会社を支える「真の稼ぎ力」を知る
限界利益とは、売上高から変動費(仕入れ、外注費など、売上に比例して増減する費用)を引いた利益のことです。
そして、限界利益率は、「売上高に占める限界利益の割合」です。
- 定義:売上高から変動費を引いた利益(限界利益)の割合
- 計算式:限界利益 ÷ 売上高 × 100
この限界利益率が高ければ高いほど、会社は価格競争に強く、固定費(人件費、家賃など)を吸収する安全マージンが大きいことを意味します。
限界利益率が低い会社は、少しの売上減少や仕入れ価格の上昇で、すぐに赤字に転落してしまいます。
これは船の喫水線のようなものです。
喫水線(限界利益率)が高ければ、多少の波(コスト増、売上減)が来ても沈没しません。
【15日に確認すべきアクション】
- 今月の限界利益率は、目標値(例:30%以上)を維持できているか?
- 特に限界利益率の低い商品やサービスがないか?
- 変動費を抑える交渉や、付加価値を高めて販売価格を上げる戦略を検討する。
まとめ:数字に血を通わせ、不安を成長のエネルギーに変える
お金の不安は、経営者の最大の精神的負担です。
しかし、その不安は、あなたが数字を直視し、未来を予測する力を手に入れることで、必ず解消できます。
毎月15日に確認すべき、たった3つの数字を再確認しましょう。
- 数字1:今月の着地見込み残高:月末の資金ショートを防ぐ「未来予測の羅針盤」
- 数字2:売上債権の回収サイト:「黒字倒産」を防ぐ「資金の回転速度」
- 数字3:限界利益率:会社を支える「利益の安全マージン」
私は、かつて資金繰りの泥沼で苦しんだ経験から、数字は単なる記号ではなく、あなたの会社の「血」であり「命」だと知っています。
この3つの数字に、あなたの経験と情熱という「血」を通わせることで、数字は生きた羅針盤となり、あなたの経営判断を力強くサポートしてくれるでしょう。
私たちは、あなたの『資金繰りの羅針盤』となり、あなたが本来集中すべき「お客様を幸せにする仕事」に情熱を注げるよう、数字の面から徹底的にサポートします。
さあ、数字に「血を通わせましょう」。
まずは、電卓を握ることから始めましょう。