【どん底体験】リーマンショックで資金繰り泥沼CFOだった私が、不安を乗り越えた「たった一つの習慣」

「今月、支払い大丈夫ですか?」

もしあなたが会社の経営者なら、この言葉がどれほど重いか、痛いほどお分かりになるはずです。

夜、ひとりベッドの中で天井を見つめながら、来月の入金予定と支払いのリストを頭の中で何度も何度も繰り返す。
「あと3日で、あの手形が落ちる…」
「社員たちの給与は、本当に、本当に大丈夫なのか…?」

その気持ち、私には痛いほど分かります。

何を隠そう、私自身がリーマンショックの嵐のど真ん中で、社員15名のアパレルベンチャーのCFO(最高財務責任者)として、資金繰りの泥沼に沈みかけていた人間だからです。

私は、数字に血を通わせる専門家、神田誠と申します。
現在は「小さな会社専門の資金繰り改善コンサルタント」として、過去5年で115社の赤字企業を支援し、その88%を倒産の危機から救ってきました。

しかし、かつての私は、ただ不安に怯えるだけのCFOでした。
この記事は、そんな私が絶望の淵で発見した、お金の不安から抜け出すための「たった一つの習慣」についてお話しするものです。

もしあなたが今、出口の見えないトンネルの中にいるように感じているのなら、どうか、あと5分だけ時間をください。
この記事を読み終える頃には、その漠然とした不安が、未来を照らす「希望の光」に変わることをお約束します。

なぜ私たちは、夜も眠れないほどの「お金の不安」に襲われるのか?

経営者を蝕む「漠然とした不安」の正体

そもそも、なぜ私たち経営者は、これほどまでに「お金の不安」に心を蝕まれてしまうのでしょうか。

それは、未来が「見えない」からです。
来月の売上は?最大の取引先は大丈夫か?急な出費は発生しないか?
経営とは、不確実性の海を、たった一人で航海するようなものです。

誰にも本音を相談できず、すべての責任を一人で背負い込む。
この孤独感と、コントロールできない未来への恐怖が入り混じったものこそが、あなたの心を締め付ける「漠然とした不安」の正体なのです。

情報不足が招いた、私の「最大の失敗」

リーマンショックの当時、私はCFOという立場でありながら、この「漠然とした不安」の本当の恐ろしさを理解していませんでした。

目の前の売上は好調でした。
だから、心のどこかで「なんとかなるだろう」と楽観視していたのです。
しかし、それはただ現実から目を背けていただけでした。

ある日、メインバンクの担当者から一本の電話がかかってきます。
「神田さん、申し訳ない。今回の融資は見送りで…」

頭が真っ白になりました。
慌てて手元の資料をかき集め、会社の現金を計算し直した時、私は凍りつきました。
あと1ヶ月で、会社の資金が完全にショートする。

社長の夢も、社員たちの生活も、すべてが自分の情報不足と甘い見通しのせいで潰えてしまう。
あの時の、胃が焼け付くような焦りと絶望感は、今でも忘れられません。

泥沼から私を救った「たった一つの習慣」

結論:それは「毎朝15分、未来の数字と対話する」こと

倒産の淵をさまよい、眠れない夜を過ごす中で、私が藁にもすがる思いで始めたこと。
それが、この「毎朝15分、未来の数字と対話する」という、たった一つの習慣でした。

これは精神論ではありません。
漠然とした不安を、具体的な「課題」に変えるための、極めて実践的な技術です。

私がたどり着いた「未来予測型キャッシュフローシート」

具体的に何をするのか?
難しい会計ソフトは必要ありません。
使うのは、ただのExcelシートです。

私はそれを「未来予測型キャッシュフローシート」と呼んでいます。

  • 向こう3ヶ月分の入金予定を書き出す
  • 決まっている支払いをすべて書き出す
  • 給与や家賃などの固定費を書き出す

たったこれだけです。
毎朝、コーヒーを淹れて席に着いたら、まずこのシートを開き、今日の入金確認や新しい支払予定を更新する。
そして、3ヶ月後までの現金の動きを、ただじっと眺めるのです。

なぜこの習慣が、不安を消し去るのか?

この習慣を続けると、驚くべき変化が起こります。
今まで「漠然とした不安」だったものが、「1ヶ月後に現金が50万円足りなくなる可能性がある」という「具体的な課題」に変わるのです。

幽霊の正体見たり枯れ尾花、ということわざがあります。
正体がわからないから怖いのです。

資金繰りという航海において、この習慣は「天気予報図」を手に入れるようなものです。
いつ嵐が来るのかが分かっていれば、港に避難したり、船を補強したりと、事前に対策を打つことができる。
未来が見えるという安心感こそが、経営者の心を穏やかにし、的確な判断を可能にするのです。

「未来との対話」を今日から始める3つのステップ

「でも、何から手をつけていいか分からない…」
そうですよね。
だから、今日からできる具体的な3つのステップをお伝えします。

ステップ1:まず、正直に「今の財布の中身」をすべて書き出す

最初のステップは、痛みを伴うかもしれません。
しかし、これが最も重要です。

会社のすべての銀行口座の残高、手元の現金を合計し、今のリアルな数字を直視してください。
目を背けたくなるような金額かもしれません。
でも、大丈夫。
すべての偉大な航海は、現在地を知ることから始まるのです。

ステップ2:次に、「最悪のシナリオ」を数字で描いてみる

次に、少し勇気を出して、未来予測シートに「最悪のシナリオ」を描いてみましょう。

「もし、最大の取引先からの入金が1ヶ月遅れたら?」
「もし、売上が今の半分になったら?」

その時、会社の現金はどうなるのかをシミュレーションするのです。
これは恐怖を煽るためではありません。
漠然とした恐怖に「具体的な形」を与えることで、それをコントロール下に置くための訓練です。

ステップ3:最後に、その未来を変える「今日の一手」を決める

最悪のシナリオが見えたら、最後にそれを変えるための「今日できる、小さな一手」を決めます。

  • A社に電話して、入金日を1日早めてもらえないか交渉する
  • 使っていないサブスクリプションサービスを一つ解約する
  • 倉庫にある不良在庫を、割引してでも現金化する方法を考える

どんなに小さなことでも構いません。
この小さな一手の積み重ねが、最悪の未来を回避し、最高の未来を創り出すのです。

不安が「羅針盤」に変わる瞬間

倒産寸前だったクライアントのV字回復ストーリー

私がコンサルティングをした、ある老舗の和菓子屋さんの話をさせてください。

三代目の社長は、職人としての腕は一流でしたが、お金の管理はどんぶり勘定。
「先代もこうやってきたから大丈夫」が口癖でした。
しかし、時代の変化で売上は落ち込み、気づけば倒産寸前でした。

私が彼に最初にお願いしたのも、この「毎朝15分の未来との対話」でした。
最初は抵抗していた彼も、シート上で「2ヶ月後に資金がショートする」という未来を目の当たりにして、顔色を変えました。

そこから、私たちは共に戦いました。
材料の仕入れ方を見直し、新しいネット販売の販路を開拓し、金融機関と粘り強く交渉しました。
半年後、彼の会社は見事にV字回復を遂げたのです。

彼が私にこう言いました。
「神田さん、数字を見るのがあんなに怖かったのに、今では未来を描くのが楽しみで仕方ないんです」と。

お金は「不安のバロメーター」から「未来を創るエネルギー」へ

そうなんです。
お金は、社長の「不安のバロメーター」です。
しかし、正しく向き合うことさえできれば、それは未来を創るための、最も頼もしい「エネルギー」に変わります。

数字は、あなたを責めるためにあるのではありません。
あなたの会社の健康状態を伝え、次の一手を教えてくれる、最高のパートナーなのです。

まとめ

もう一度、この記事の要点を振り返ってみましょう。

  1. 経営者の不安の正体は「未来が見えない」という漠然とした恐怖である。
  2. その恐怖を打ち破る唯一の方法は「毎朝15分、未来の数字と対話する」習慣を持つこと。
  3. 「未来予測型キャッシュフローシート」を使い、未来を「見える化」することで、不安は「具体的な課題」に変わる。
  4. 「現実直視」「最悪のシナリオ」「今日の一手」の3ステップで、誰でも今日から始められる。

もう、夜中に一人で悩む必要はありません。
あなたの会社の「お金の不安」を、明日への「成長のエネルギー」に変える具体的な一歩を、ここから共に踏み出しましょう。

さあ、数字に「血を通わせましょう」。
まずは、電卓を握ることから始めましょう。